1.はじめに
BLUE PROTOCOLのサ終が決定しました。
これに伴って「国産MMOはもう終わりだ」という意見が飛び交っているので、個人的にも思う所があり一旦考えを整理したいなと思った次第です。
2.ブルプロ自体の話
まず前提としてブルプロ自体はMMOじゃないです。
恐らくMMOと認識してプレイした多くのユーザーが自身の体験からこの結論に至っていると思います。
そして何より公式でも明言(リンク)されています。
サ開当時から匿名掲示板なんかでも「言っている事だけはご立派」とインタビューの内容が擦り倒されていたりもしました。
公式の言葉を借りるとジャンルはオンラインARPGですね。
ただ、致命的な問題として(個人的には)そもそもアクションが根本的に楽しくないんですよね。
本当に爽快感がなかった。
これは6人PTプレイかつロール制のゲームではないが故に個人に大きな火力を持たせる訳にはいかないという弊害ですね……。
その上サーバーが貧弱すぎるのか敵がフリーズして動かない事も多く、アクション以前の問題もありました。
一応僕がやっていた当時でも集敵して槍の刻印爆破なんかは例外的に爽快感がありましたけど、基本はアクションなのに硬い雑魚の群れをひたすらスキル回ししつつペチペチ削るゲームです。
アクション自体もかなり地味寄りで、斧の右クリ発生前キャンセルなんかを多用して遊んでいる時は流石にそれなりの充実感を覚えていましたが、大多数の人にはバトルは退屈だったろうと思います。
その上でレベリングや素材狩りはフィールドで雑魚をひたすら処理し続ける旧時代のMMOをやらされます。
フィールドボスなんかも居るのですが、沸かせ条件を満たす必要がある関係で沸くまで放置のフリーライド勢との水面下の争いも起きやすかったりしました。
ソロでのアクションも楽しくないんですよね。
旧PSO2なんかはソロはソロでアクションとして適度に爽快で楽しかったんですけどそういう事もなく……。
MMOじゃない癖にMMOのキツい所が詰まっています。
絶対にARPGじゃない方が良かったよね?と今でも思います。
他にもゲーム内経済が存在しなかったり、まともな生活要素やハウジング(カスタムルーム)なんかも無いです。
勿論MMORPGじゃないのでオミットしたという言い分はあるんでしょうけど、ARPGとしてもMMOとしても中途半端というか、ゲーム性の面では何者にもなれていない状態だったと思います。
その上最適化不足だし、造りも粗くてゲームが重い。
ただそんなブルプロにもセールスポイントはあって、アニメ調+キャラクリ可能+オンラインゲームの3点セットがとにかくオンリーワンなんですよね。
要素1~2個を満たすゲームであればいくらでもありそうですけど、全部揃っていて尚且つ新しめのゲームとなるとほぼ選択肢がありません。
今は亡きECOのようにキャラクリ+アバター要素を主体として楽しめる路線で戦う余地はあった気もするのですが、残念な事にサ開時のブルプロって衣装に殆ど選択肢がなかったんですよね。
ゲームプレイで入手出来る衣装が極端に少ないですし、初期のガチャ衣装はこんな感じ(リンク1、リンク2)です。
その上でガチャ単価が恐ろしく高いですし、ハズレ商品は正真正銘のゴミだらけで青天井。
この辺も後々テコ入れはされたのですが、サ開時の同接20万人を消し飛ばすには十分すぎました……。
他にもバトルパスの仕様が不可解だったりと、MMORPGを運営していく上で最も重要なマネタイズが根本的に失敗していたと思います。
マネタイズにせよゲーム性にせよ国産のMMO路線であればFF14がありますし、ARPGでいえばNGSこそ奮っていませんが旧PSO2は(特にEP3前後は)よくやっていたと思います。
順当に教訓を得られそうな先例がいくらでもあるのに謎の独自路線を貫いてしまった点には擁護の余地がありません。
そしてプレイした人なら誰しも知っていると思いますが、UI関係も酷いですからね。
その上新規ダンジョンの大半が色を変えたアセットを毎回継ぎ接ぎしているだけのコピペという有り様。
それでも僕が離れる前の23年秋~冬あたりは現実的な路線変更を重ねて改善点も多く見られたのですが、土台そのものの問題を解消するのは厳しいですし、離れていった20万人が帰って来るような施策も打ちようがなく……といった感じ。
そんなこんなで纏めると、ブルプロのサ終自体はブルプロ自体に問題があり、MMOの栄枯盛衰を論ずる以前の話だったという事です。
※追記
それでも自分自身は2023年末まではブルプロを遊んでいて、上限50Lv時代は槍も含めて全クラスカンストさせたりもしていました。
居心地の良いコミュニティに所属できた事でこれだけ欠点を羅列しつつも思い出自体は決して悪いものではありません。
最後までブルプロに付き合うという人も相応に価値を見出しているからこそ続けているんだろうと思います。
3.MMOの話
まず「MMOの定義って難しくないですか?」という話にはなるのですが、国産タイトルで言うとFF14なんかを現行世代とし、FF11やらリネージュ2やらROやらを便宜上旧世代と定義して話を進めて行こうと思います。
というのも僕含む旧世代好きの人間は現行世代のタイトルをMMOと認識したがらない傾向があるので……それだと話が進まない。
その上でMMOブームの直撃世代は”古き良き”MMOを求める傾向があると思うんですよね。
僕自身FF11のリメイクや精神的後継作を内心では求めているのですが、実際には厳しいだろうなというのが最近の悩みだったりします。
まずは旧世代タイトルの全盛期と比べてもプレイ環境が整備された結果、話題のゲームには凄まじい人口が集中するのがシンプルにキツいんじゃないかと。
一応チャンネル制だとか色々と対策はあると思うのですが、旧世代MMOってパブリックフィールドやダンジョンでの争奪戦を醍醐味としてる人も多いと思うんですよね。
“古き良き”文化ではあるんですけど、多分今パブリックの取り合いに心を削られると気が狂うんじゃないかという気がします。
加えて情報の共有速度は勿論、コンテンツの消費速度も飛躍的に上がってしまっています。
みんな情弱でスローペースにゲームを遊ばざるをえなかった時代ではないんですよね……。
加えて現代のゲームとなるとある程度ソロ志向も強いでしょうし、その環境に耐えうるパブリックフィールドのデザインは正直ピンと来ません。
※ブルプロなんかはサーバー選択無しの癖に適度に混雑しないようなチャンネルデザインをしていてそこだけは凄かった気がしなくもないですが、もしゲーム内経済があってフィールドボスに高額ドロップなんかが仕込まれていたら途端にチャンネル制度の闇が溢れて破綻していたと思います。
そしてサ開時にゲーム自体のボリュームもかなり要求されるのがやはり厳しい。
韓国産のMMOだとPvPなんかでコンテンツ不足を埋めていた気もするのですが、国産MMOではPvPはある種の隔離所であって欲しいという層も多い気がします。
競技サブコンテンツとして存在するのは良いけど根幹に混ぜてほしくない的な……。
ARPGで言えばタイムアタックやスコアアタックなんかがその隔離所になるイメージがあります。
旧PSO2なんかもTA勢は別世界の人間と認識している人が恐らく多かった印象です。
一部のユーザー用にそういう遊びもあって良いと思うのですが、恐らくメインターゲット層にはあんまり響かないんじゃないかと思います。
そんなこんなで考えれば考えるほど現実的な落とし所としてゲーム性はFF14のようなスタイルに落ち着いて行かざるをえないよなぁ……と思ってしまったり。
ただ勿論、高難易度エンドコンテンツを雑にドンと置いたら良いって話でもないです。
結局MMORPGっていうのはコンテンツの総合商社なので縦型ではなく横へのコンテンツの広がりも必要になるよなぁと。
でもサ開時点でそこに厚みを持たせるのキツいですよねぇ……。
個人的にはゲーム内経済が盛り上がっていれば金策という最強のコンテンツが構築される訳ではあると思うので、ここを適度に制御するのは必須になる気がします。
そして旧世代MMOのスタイルも試行錯誤の余地はあると思うのですが、いかんせんMMORPG自体の開発コストが非常に高いが故に実際には革命的な発明も見込めない気がします。
加えて商売である以上は商業的な成功を見込んでプロジェクトを立ち上げる必要がありますし、運営や開発に要求される能力が非常に高くなってしまいます。
若干話が戻ってしまいますが、ブルプロの失敗はそういった純粋な能力不足の中で無理な試行錯誤を繰り返したのも大きな要因になっていると思います。
サービス開始の時点でもまだどうやってユーザーを楽しませるのかすら定まっていた感じがしませんでしたしね……。
マネタイズ関係もかなり難しい所で、まずMMORPGユーザーには忌避されやすいPtW構造は採用しづらいと思います。
その上で莫大な開発コストを回収する為に少なくとも黒字運営をしていく必要もありますし、経営陣にはGOサインを出して貰えないんじゃないかという感じ。
上述の通り、ブルプロはこの辺もしくじっていました。
いやでもブルプロじゃなくても難しい所だとは思います。
「ブルプロの失敗でもう後に続く会社はなくなる」という意見もありますが、そもそも現在進行系で成功判定を受けつつMMORPGを運営出来てるのって国内だとスクエニくらいだし元々作る会社ないよねという感じも。
FFなりDQなりのオンラインタイトルを再び作るとして次もまたヒットさせられるのかというとかなり厳しい気はしますが、正直スクエニはブルプロとか関係なくイケると判断したら出すし厳しいと考えたら様子見するよねと。
そんなこんなでブルプロは棚に上げておくとしても、旧世代のMMOの復権を望む以前に現行世代の後継作品すらも国産で期待するのはかなり厳しそうだなと思っています。
MMOの本場というイメージがある韓国産でもロストアークがサ終したり、アーキエイジが北米版のサービスを終了していたり、黒い砂漠の新作がMMOではなくオープンワールドだったりとパッと見ではやはり苦戦しているような……。
4.旧世代MMO難民の行く末
ここまで書いた通り、有力な新作を望むのは難しいです。
一方で20年前後稼働しているようなMMOはそれなりにあり、人口減少対策によって当時とはひと味違う快適なゲームプレイが可能になっている場合も多いと思います。
つまり身も蓋もない話になってしまうのですが、MMOそのものに触れたいなら旧世代にしろ現行世代にしろ未だにサービスを継続している作品を遊ぶしかないんじゃないかと……。
旧世代作品は人口減少に伴ってMMOの定義に含まれる「大規模同時接続」的な要素が行方不明になってしまっている気はしますが、ゲーム性そのものは長く続くだけあって相応に確立されていますしね。
それこそブルプロからの移住先なんかだと上述の通りアニメ調のグラフィックという要素は欠落してしまいますが、ある程度の人数で移住すれば大抵のMMORPGをゲームとしては楽しめるんじゃないかと思います。
※ブルプロ民はかなり渋めのゲーム性と付き合い続けた時点で大半のゲームに耐えられそうという勝手な印象もある。
そんな人居るかなぁ……?という気はするんですが、旧世代のMMORPG自体触れた事がない人には観光という意味でも刺激的なんじゃないかと……。
現行世代のビッグタイトルだけあって「FF14はやってみたけど合わなかった」という人にこそ古めのMMOをハシゴしてみて欲しいですね。
僕自身はFF11に脳を焼かれているプレイヤーではあるのですが、あえてFFではなくMoEなんかを勧めてみたくもなります。
御長寿タイトルは長く続くだけあってどのタイトルも独自の面白さがあると思うのですが、その中でも非常に尖り散らしたゲーム性なんですよね。
ぶっちゃけMoEに集住する計画があるなら僕自身がそこに混ざってみたいかも?
※FFはそれなりに遊んだしPTプレイにも満足してしまったという側面もあります。
それにマビノギなんかはゲームエンジンを置き換えてグラフィックを一新するプロジェクトが進行しているようですし、それなりに移住者が出そうな気もします。
これは新作MMOの成功は難しい中で更なる長期運営を目指すという意味でかなり意欲的だなと思います。
サービス開始して数年なんかだと古参と新参の格差で物議を醸しそうですが、20年近いプレイを重ねた原住民になってくると最早新規の比較対象にすらならないでしょうし、逆に参入しやすいんじゃないかという気もします。
間違いなく採算は取れないだろうという気はしますが、今後ちょくちょくこういった形でまさかのグラフィックアップデートを行う作品が出てくるのかもしれません。
※FF14なんかもそれこそグラフィックアップデートがあった模様。
5.どう向き合うのか?
ここまで散々「もう厳しいだろう」という事を書いてきた上で更に追い打ちのような話になってしまうのですが、コンテンツの総合商社としてのMMOという形態そのものが厳しいと思います。
専門化が進んでいると思うんですよね。
アバターチャットとしてMMOを楽しんでいた人にとってはVRChatなんかがあると思いますし、各種snsやDiscordを駆使しての交流も盛んになっていると思います。
PvPを楽しみたい人であれば多種多様なジャンルの対戦ゲームがオンラインで楽しめます。
ファーム作業が好きな人はハクスラがありますし、ハウジングなんかが好きな人はサンドボックスや生活特化のゲームもありますし。
特に前者は超有名タイトルからローグライクに寄せたインディー作品までかなりの規模があると思います。
新作の旧時代MMOをやりたい人はsnsで他者と交流しつつハクスラをプレイするのが一番丸いんじゃないかと思うほど。
MMOを作って貰うのは厳しいと思いますが、それなりの規模で萌え萌えハクスラを出して貰うのはワンチャンあるんじゃないかとも思ったり。
そんなこんなで単一のゲームで全てを行うのではなく複数タイトルで好きなジャンルをつまむ時代になって久しいよなぁと改めて痛感しています。
加えてスマートフォン向けでもビッグタイトルは凄まじいクオリティの3D作品を叩きつけて来ますし、CS機やPCよりもそちらでゲームを楽しむ人も多いでしょうし……。
それこそスマホでもMMOを標榜するようなゲームって結構あるんですよね。
以前記事にしたToSモバイルなんかもそれなりにはMMORPGをやっていたと思います。
最終的には過疎化と共に虚無感が勝ってしまい離れてしまったものの、ああいう自動化を肯定したオンラインゲームもまた新しいMMOの形と言えるのかもしれません。
そんな中で旧世代のMMOをプレイしたい人はというと……やはり素直に昔のMMORPGを遊ぶか、自分で好きなゲームをチョイスして擬似的にそういったゲーム体験を構築する必要があるんだと思います。
6.まとめ
歯切れの良い記事にしたかったのですが、考えていて気が狂いそうになったのでこんな内容になってしまいました。
細かい内容は二転三転する可能性こそあるものの、大筋としてはMMOについての認識がそう変わる事はない気がします。
まず前提として「流石に古くなってきたとはいえ、MMORPG自体はそれなりの数サービスしているんだから死んでる訳じゃないだろ!」という話ではあるんですよね。
一方で実態として有力な後継作品の登場を望みづらいというのもそろそろ自分の中で認めておかないとなと……。
気を抜くとすぐに「大量に人が居るFF11のリメイク作品やりてえ~~~~」とボヤいちゃいますからね。
やや話が変わってしまうのですが、一人でMMOの美味しい部分だけ味わえたような作品といえば僕の中でElonaがあります。
いよいよ続編のElinが解禁される日も近くなってきたのでしばらくはMMOの幻影を追ってしまう狂気から逃れられるのかもしれません。
MMO難民の皆さんも狂気を上手く中和しつつ楽しいゲームライフがありますようにと願うばかりです。

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